タケヤマ暮らしをのぞいてみよう!第3弾は、住民による団地の清掃「美化活動」についてです。竹山団地16‐2ブロックの美化活動は自由参加にもかかわらず、半数以上!もの世帯が参加して賑わっているという噂を聞きつけ、そのヒミツを探るべく参加者の皆さんにお話を伺ってきました。
12月の寒い朝、今回の美化活動の担当棟の1つ、1606棟の前で待っていると・・・。続々と人が集まってきて、なんとなーく輪ができてきます。ちょっとストレッチなどして寒い体を温めつつ、「寒いねー」「元気だった~」など住民同士の会話が始まりました。
しばらくして回ってきた出席簿に、みんなサインをしていきます。
-ちゃんと、誰が出席しているかわかるようにしているんですね。
「コレね、ちゃんと出席すると後でお金が返ってくるのよ。」
という棟代表のSさんの話をよく聞いてみると、竹山団地16-2ブロックの清掃活動は、1回参加すると、1世帯当たり2000円がみんなの払った管理費から参加世帯へ還元される仕組みだそうです。1回の活動はおよそ1時間半なので、割といいアルバイトになりそうですね。
竹山団地16-2ブロックの美化活動について、ここで詳しく説明したいと思います。美化活動には3種類あり、1つ目が毎月1回全棟で一斉に行われる「美化デー」で、主にそれぞれの棟の前の芝刈りなどの清掃をメインで行います。2つ目が落ち葉の多い11月と12月に毎週週替わりで棟当番が行う「特別美化デー」です。今回取材した日は、この特別美化デーの日で、主に16-2ブロックの外周の落ち葉清掃をする日でした。そして3つ目の美化活動は、通称「美化ボラ」と呼ばれる月1~2回の美化ボランティア活動です。美化ボラは、植栽の剪定や法面の整備などを行う有償の活動です。美化ボラについては、後ほど詳しく触れたいと思います。
落ち葉が少なく、草木があまり成長しない1・2月には美化デーはお休みで、1年間で10回の美化デーがあります。年度の最後に1年分の参加費がまとめて還元されます。団地の清掃活動というと、全員強制参加だったり、欠席する代わりにお金を払う制度も耳にしますが、竹山団地16‐2ブロックでは参加することがプラスに働く仕組みになっているようです。
さて、そんな話を聞いているうちに、棟代表の方から今日の作業の流れが説明され、いよいよ美化活動が始まります。
早速皆さんホウキやチリトリを持って、それぞれ持ち場に分かれ、道路の落ち葉や、ごみを掃いて袋に詰めていきます。「次はあっちね」「こんな感じかな」など、声を掛け合ってチームワークよく作業を進めて、道路がみるみるうちに綺麗になっていきます。それぞれ手を動かしながらも自然に会話が生まれていたので、少しずつ会話に混ぜてもらいながら、いつ頃竹山団地に引っ越してきたのか、美化活動についてインタビューさせていただきました。すると、美化活動への参加は有償だからということだけではなく、思い思いの理由があることがわかってきました。
「引っ越してきてから、こういう活動があるって知りました。違う地域から引っ越してきて、知り合いもいないし、みんなに顔を覚えてほしいなと思って。生活していたら、どんなことがあるかわからないし、知り合いができると安心ですよね。」
そう話すのは、竹山に引っ越して1年未満の女性です。
確かに、美化活動で月に1度顔を合わせて一緒に作業していれば、なんとなく会話が生まれ、顔見知りが増えてきます。以前「入居して日が浅い入居者の参加率が高い」と理事の方が話していたのもうなずけます。
また、この団地に住んで20年以上の女性は「子育てが忙しかった時は、なかなか美化活動に参加できなくて。みんなに綺麗にしてもらって悪いなという気持ちがあったんだけど、子どもが巣立ってからは、今の子育て世代の分もきれいにしようと思って参加してます。」と、てきぱき作業をしながら話してくださいました。
次は今回のもう一つの当番グループ、1609号棟の方たちにお話を聞きます。この1609号棟、美化活動参加率はなんと70%を超えているとか!(※2018年度統計)参加メンバーは比較的長くこの団地に住んでいる人が多く、ご高齢の方も多いとのことでした。
「私たちは入居が長く、付き合いも長いから、お互いの家族関係もなんとなく理解しているの。だから美化活動に参加することは、お互いの安否確認の意味合いも強くて。あの人今回参加してないけど、大丈夫かしら?とか、ご主人元気?とか。私は前回出られなかったけど、今回は元気だよって周りに知らせるつもりで参加してる。」
そう話してくれたのは、80代女性です。美化活動がお互いの見守り安否確認にもなっているとは、素敵な驚きでした。さらにこんなお話もお聞きしました。
「この間、ご主人が具合が悪い中で参加した奥さんがいたんだけど。実は主人の具合が悪いのよって、掃除しながら周りに話したらスッキリしたって言ってた。他にも、私たち高齢者だから、どこの病院に行ったら凄くよかったみたいな、わざわざ話に行くようなことでもないことを美化活動しながら話せるのよね。」(80代女性)。
「清掃で物理的にスッキリして、おしゃべりで精神的にもスッキリするし、運動にもなるから、動けるうちは参加しようねと言っているの。」(80代女性)
当日参加された方の最高齢はなんと93歳!毎日4階まで階段で登っているそうで、去年までは、棟前の花壇の手入れもほとんど一人でやっていらしたとか。「自分ができることをやって、みんなが喜んでくれるということが嬉しい」と朗らかに話してくださいました。この最高齢の方に限らず、ご高齢の方が口を揃えて、「お金のためじゃない」「自分ができることは自分がやる」と話してくださいました。自分たちの住まいは自分たちで綺麗するのは当たり前、自分がやるんだという意識で活動していることが伝わってきました。
皆さんの手際よい作業で道路の落ち葉やゴミがすっかり綺麗になり、1時間余りで特別美化デーは終了しました。
美化ボランティア活動について
先述した美化ボラ活動は、敷地内に植えられている植栽の剪定や、16-2のブロックの斜面の整備などを主に行います。1か月に1~2回くらい、3時間程度活動をしていて毎回15名くらいが参加しているとのこと。団地の敷地にバラのアーチを造ったり、遊歩道「梅の小径」を造ったり、芝を刈るなど、大掛かりな機械でないと切れないほどの大きな木の伐採以外はほとんど住民の美化ボランティア活動で行っているというから驚きです。
特に夏の芝刈りは成長が早く大変で、自分たちで敷地の樹木を管理することは大変なことも多いようです。しかし、自分たちの敷地を自分たちで綺麗にしていくことには、他にもメリットがありそうです。美化ボラに参加している人にお話を聞いてみました。
「ガーデニングや土いじりが好きな人は、集合住宅でこういう大掛かりな庭造りができて楽しいと思う。しかも有償だし。」
そうお話してくださったのは、数年前に団地に引っ越してきた男性です。
美化活動と美化ボラの活動の両方に参加している方の中には、1年の活動費で5,6万円のお金が返ってくることもあるそうです。たしかに、ガーデニング好きだったらお金がもらえるなんてちょっとラッキーかもしれません。
さらに、竹山歴20年以上の女性が続けます。
「去年は台風の当たり年だったでしょ。大きな台風が来るというがわかったから、直前に緊急で会議をして、台風で折れそうな木をすぐ切ったのよ。そしたら、台風の被害がほとんどなく済んで。ニュースで見たら、各地で凄い被害でしょ。みんなで、切って良かったねって話したのよ。」
樹木の管理を植栽業者にお願いしていたら、こんなに素早く対応することは難しかったでしょう。これは、日頃から自分たちで木の状態を管理しているというだけでなく、すぐに判断して動ける体制を整えてきた皆さんの努力がこういう有事の際に役立ったという好例ではないでしょうか。
今回、住民の皆さんの活動を目の当たりにし、お話をお聞きして見えてきたことがあります。竹山16-2ブロックの美化活動&美化ボランティア活動は、自分たちの住む敷地を自分たちの手で清潔に美しくする活動であるだけでなく、住民の中でお金を回す経済活動でもあり、住民同士のコミュニケーションを促す、参加する方によっては一石二鳥にも、三鳥にもなる活動だということでした。
参加する人に金銭的、精神的なメリットがあるこのシステムだと「欠席は体面がよくないから参加しなくちゃ」「参加できず肩身が狭い」「私は出てるのに、あの人は参加していない」などコミュニティ内でのネガティブな感情が生まれにくいという印象も抱きました。
高齢化や生活スタイルの変化にともない、共用部の清掃に課題を感じている団地も多いこのごろ。竹山団地16‐2ブロックの取り組みは現実的かつコミュニティ活性化の付加価値も期待できる、ひとつの素敵な道筋なのではないと感じました。
取材・執筆:村上亜希枝 (団地ジャーナル http://www.danchijournal.net/)
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