今日は一般社団法人団地再生支援協会から、1級建築士の奥茂謙仁さんをお招きして、竹山団地の耐震性についてお話を伺いました。
奥茂さんは、グッドデザイン賞を受賞したヌーヴェル赤羽台(旧赤羽台団地)を始めとした、UR賃貸住宅や県営住宅などの団地の設計やコンサルティングに長く携わってきた団地の設計の専門家です。建物の耐震性や構造などについて、住民が日頃から疑問に思っていることを中心に聞いてみることにしました。
(この記事の内容)
竹山団地16-2ブロックの建物データ
・プレキャストコンクリート(PC)造4階建て
・階段室型
・昭和46年3月竣工(旧耐震基準)
奥茂)竹山団地をはじめとする団地は、鉄筋コンクリート造(以下RC造)の建物が多いのですが、今回いただいた資料(建築の検査済証)を拝見すると竹山団地16-2は、建築計画を元に、きちんとそのとおりに建築されたという確認までしっかりとれています。当時は団地の建設ラッシュだったので、確認検査まではとれていない団地も私の経験上、少なくないんです。
また、RC造は現場で鉄筋を組み、コンクリートを流し込むという、いわゆる(現場打ち)というのが主流ですが、竹山16-2に関しては、PC造、つまり工場であらかじめ作られたプレキャストコンクリートを使用して作られています。
現場打ちだと現場の天候などの状況により、コンクリートの品質を安定させるのは難しいのですが、プレキャストコンクリートは工場で作られて運ばれてきたものなので、品質や性能が安定していると言われています。
鉄筋コンクリート造の耐用年数
Q)よく、「築50年くらいの団地だから、もう建て替えないといけないんじゃないか」と聞かれることがあるのですが、鉄筋コンクリート造の建物は、どのくらい持つのでしょうか?
奥茂)鉄筋コンクリート造の建物の躯体の耐用年数は、メンテナンス状態によりますが、一般的には70~100年くらいと言われています。47年という数字を聞いたことがある方もいるかもしれませんが、それは、税法上の減価償却の年数で、物理的な寿命とは異なります。
また、建て替えに関してですが、築50年を前に建て替えている団地に関しては、建物の寿命というよりも、高層マンションに建て直した方が敷地の活用率が高い、エレベーターを設置できるなど別の理由で建て替えている団地が多いのが現状といえるでしょう。
Q)具体的には、どのようなメンテナンスで耐用年数が変わってくるのでしょうか?
奥茂)コンクリートというのは、一定の期間経つとアルカリ性から中性へと変化し、中の鉄筋に錆が生じ、錆からくる膨張により、外壁にひび割れが生じてしまいます。ひび割れたところからの水の浸入により、躯体の損傷や耐力の低下を招きます。ですので、この中性化を防ぐメンテナンスをしっかりやっているかどうかが、非常に大事になってきます。
竹山16-2ブロックでは、2010年に外断熱改修工事をされていますね。外断熱改修は、コンクリートを外側から断熱材でくるむので、断熱性を高めると同時に、このコンクリートの中性化を防ぎます。コンクリートの中性化を防ぐ工事としてはとても有効なものです。
住民の「結露がひどい」「夏の暑さ、冬場の寒さ対策をしてほしい」という声に応えるために行った外断熱改修工事が、建物全体の耐用年数を高めた形になり、外断熱改修工事の勉強や計画を行ってきた管理組合の前理事長の稲葉さんたちは嬉しそうです。
コンクリートの長寿命化が図れていると安心し、話は団地の耐震性へと移ります。
横浜市の耐震予備診断
Q)竹山団地16-2ブロックでは、平成20年に横浜市が実施した耐震予備診断(※横浜市の診断は平成27年度にて事業を終了しています)を受けました。診断の結果、「本診断(精密診断)の必要性は低い」とのことでホッとしているのですが、専門的な内容なので、報告書について補足していただけると嬉しいのですが…
奥茂)自分が調査をした訳ではないので、あくまでもこの報告書を読んでの補足になるのですが・・・まずは、「地盤・配置については問題ない」、建物も「経年劣化は見られるが~重大な損傷はない」とのことですね。
Q.「耐震指標値は、これ以上の詳細な調査は必要ない」という診断結果がでているのは、新耐震基準に適合しているということでいいのでしょうか?
奥茂)それは一部がイエスで、一部はノーです。というのも、新耐震基準は二次設計として地盤の性質を加味して計算することが新たに加えられました。新たに加えられた二次設計部分に関して、旧耐震の建物は計算上、基礎・杭部分に関しては基準に満たないことが多いのです。
一方、一次設計部分(建物部分)に関しては、旧耐震と新耐震では基準に変化はありません。耐震指標値がX方向、Y方向とも1.0を上回っているため、目標値を満足していること、堅牢な鉄筋コンクリート壁式構造の建物で、メンテナンス上も重大な損傷がないため、これ以上調べる必要がないというわけです。
実際に、阪神淡路大震災の時は、旧耐震の鉄筋コンクリート壁式構造の建物(無理に増改築を行っていないもの、1階ピロティ部分が広くないもの)で倒壊したものは1つもないと報告されています。(参考:「マンション耐震化マニュアル」平成 26 年 7 月再改訂 国土交通省)。
企画・一部の写真:竹山16-2団地管理組合法人
文・写真:村上亜希枝 (団地ジャーナルhttps://www.danchijournal.net/)
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