竹山団地16-2ブロックでは、月に2回気軽に参加できる住民同士の集まりとして「ふれあいサロン」と名付けられたお茶会を開催しています。「ふれあいサロン」にお邪魔して、その活動とそこに込められた思いにふれました。
「ふれあいサロン」ってこんなところ
13時30分の開始前に到着すると、すでに5〜6人の方が集まり、そのうちの2〜3人の方が台所でテキパキとお茶やお菓子の用意をしていました。そうこうしているうちに少しずつ人も増え、この日集まったのは11人。
長机を組み合わせた大きなテーブルにつくと、発起人の一人でリーダー的存在の A.Sさんが「ふれあいサロン」について説明してくれました。
-「ふれあいサロン(以下サロン)」とはどのようなものですか。
「最初は(住民同士の)助け合いをどうすれば良いか、管理組合が検討する中で、顔をあわせることが、いざという時に大切だろうということになり、管理組合がこの部屋を借りるタイミングではじめたんです。」(A.Sさん)
住民運営の管理組合が出来た平成24年頃、“孤独死”が社会問題となっていました。A.Sさんは、出来るだけ孤立した人を出さないためには、住民同士の“助け合い”を機能させることが重要だと考えました。管理組合の理事たちと相談した結果、住民同士が助け合える団地にするために“サロン”という形で普段から集まり、住民同士が顔見知りになれるようにしようということになったそうです。
-みなさんはどのくらいサロンに通われているんですか。きっかけはありましたか。
「(16-2管理組合の)理事の役が回ってきて、ちょうどサロンを作ってみようということになったんで、最初から携わって今に至ります。」(N.Mさん)
「4年前にここに入居してすぐにサロンに通うようになりました。色んな方と関わりあうことが大事なのと、何か災害があった時に顔を合わせてもお互いにコミュニケーションが(すぐには)うまく取れないと思って。」(H.Fさん)
「引っ越した日がたまたま美化デー(掃除や草木の手入れをする日)で、顔を出して挨拶をした時に誘ってもらったんです。一人暮らしやし、寂しいんで、ええなと思ってそれから来させてもらって、一人暮らしの寂しさを紛らわせてます(笑)。」(S.Tさん)
「2019年10月に引っ越してきて、今年の新年会にお邪魔して誘っていただいて、どんな風かなと思って。こんな風でした(笑)。ぜひぜひ続けていただきたいと思ってます。」(I.Sさん)
参加して間もないI.Sさんも、すっかり場に馴染んで本当に楽しそうにされていました。
入居のタイミングは、サロンに参加する大きなきっかけとなるようですが、ご主人の大病をきっかけに息子さんの住む竹山団地に引っ越してきたというS.Fさんは、入居してしばらくは忙しく、すぐには参加されなかったそうです。
「なんとなくあるのは知っていたんだけど。向かいのI.Mさんも参加しているからどんなのかなと思っていました。今では、主人が、“今日はサロンに行かないのか?”って言ってくれるんです。楽しいからね。」(S.Fさん)
「常設的に掲示をして、行ってみようかという場所があることが大切なのかなと思います。」(A.Sさん)
サロンがやっていることをみんなに知ってもらう、そして声を掛けて誘うことも大切ですね。
この日は、息子さんのところにたまたま遊びにきたというSさんも、メンバーから誘われて参加されました。サロンはとってもオープンで、関わる人みんなを歓迎しています。
顔を合わせるって大切
「(参加し始めたのは)ここ数年かな。自分の(部屋と同じ)階段を通る人たちはだいたいわかっていたんだけど、隣の階段はもう誰住む人ぞで、全然知らなかった。こういうところに参加しないとね、他の棟は全然誰だか分からない。自分の棟で誰か亡くなったって、分からないもんね。」(A.Mさん)
竹山団地全体の連合自治会で副会長を務めるA.Mさんの言葉を聞いて、深く頷きました。
昨今のドライなご近所づきあいだけで、近隣の住民みんなと知り合うことは難しいように感じます。入居して間もない方だけでなく、長くお住いのA.Mさんも、知り合いを増やそうと意識的にサロンに参加するようになったそうです。
さらにA.Mさんは、事情を抱えた住民に管理組合の役員の順番が回ることを心配されています。
「脚が悪いだとか、病気だとか、病人を抱えているとか…。各々の事情が分かれば(できる範囲の)簡単な役をやってもらったり、代わってあげたりとお手伝いをやってあげられる。けど、そこまで話す人はなかなかいないよね。事情を知るためには、顔見知りにならなきゃね。」(A.Mさん)
「顔を合わせてるからできることがあるんですよ。」(A.Sさん)
サロンが終わった後、A.Sさんが亡くなったサロンのメンバーの話をそっと教えてくれました。
その方は物忘れがひどくなってしまい、電気代の支払いさえ出来なくなってしまったそうですが、サロンのメンバーがサポートすることで、亡くなるまで竹山団地で暮らすことができました。顔を合わせ、互いを知ることで、サロンが目指す“住民同士の助け合い”がみごとに機能しています。
楽しく、続けられるサロン
-月2回のサロンでは、どういったことをされてるんですか?
「お茶会ですね。おしゃべり会です。」(A.Sさん)
-どんなことを話すんですか?
「あっちが痛いこっちが痛いっていう話から始まってね(笑)。」(H.Fさん)
「いやー、もう雑談ですね(笑)。おしゃべりするのが楽しいんです。雑談の中に“あーそうか”ということが結構あるのよね。」(N.Mさん)
「たまーにね、(話題提供のために)新聞記事を用意してね。停電になった時どうするとか。ろうそくは危ないとかね。生活の知恵を共有したりするのが結構(役に立つよ)ね」(A.Sさん)
一人が口を開けば、あちらこちらから返事が返って来て、どんどん話が盛り上がります。みなさんのおしゃべりする様子は本当に楽しそうです。
いざという時に安心というだけでなく、知り合いが増えるというのは楽しいものです。
-サロンの参加者はどのくらいですか。
「今日くらい(11人)ですね。だいたいこんなメンバー。」(H.Fさん)
「メンバーが増えないんですよ。」(S.Fさん)
「集まらへんというのがほんま悩みですね。どうしたらえんやろね。」(S.Tさん)
「若い方はお仕事されてるから難しいと思う。一人暮らしの年配の方がいっぱいいらっしゃるから、その方たちがどうして出てくれないのかが悩みです。」(I.Mさん)
皆さん口々に、参加者が増えないという悩みを語ります。
「色々やってみたんです。何か集まるきっかけがあればと思って…。手芸やりましょうとか、体操やりましょうとか。でも、なかなかね。」(S.Fさん)
「人を増やそうと、いろいろやってはみたんですけど、なかなか定着してなくて。でも、継続してやっていることがまず大切なんではないかという考えで、ふれあいサロンを続けていこうという。いらしている方はずっとおしゃべり、雑談ですよね。色んな人の話を聞いたり話したり、声を出してしゃべるということが大切なのかと。」(N.Mさん)
サロンは自然発生的に生まれた7名の運営委員が2名ずつ当番をして、お茶やお菓子、部屋の準備をしています。 参加者を増やすためにこれまで試行錯誤を繰り返したようですが、運営が負担にならず、楽しみながら変わらず続けられることを模索し、辿り着いたのが“おしゃべり”だったようです。
メンバーを増やしたいと語るみなさんですが、「若い人たちが主体となって何かやって欲しい」という希望も多く聞かれました。2011年の東日本大震災や2019年の大型台風などを経験し、ご近所付き合いの重要性を感じる方も多いと思います。そうは言っても、仕事や子育てと忙しく日々過ごす中、ついついドライになりがちです。
「ここに住んでいながらここの自治会のことも何にもしてなくてね。会社一辺倒で。それで罪滅ぼしで、70(歳)過ぎてから管理組合のお手伝いをしたりしててね。」(A.Sさん)
他のメンバーからも、同様の意見や仕事をしながら地域活動へ参加することの難しさを理解する言葉が多数あがりました。しかし、竹山団地16-2ブロックには、気軽に利用できる“みんなの部屋1018があります。団地ならではの広い敷地、八重桜や梅の木の下のベンチ、そして昨年住民自身で作られたバーベキューコンロもあります。この恵まれた環境でなら、なにかと忙しい若い世代でもなにかできそうです。みなさんがそうであったように、それはちょっとしたきっかけなのだろうと感じます。
緑豊かで、外断熱が完備され、ペットの飼育も可能な竹山団地16-2ブロックは、とても魅力的です。増えつつある若い世代の活動が生まれる日は近いはずです。
変わらずそこにある、サロンの意味
-ご近所同士の集まりに躊躇する方が多いことも、正直なところ理解できます。どうしたらサロンやイベントへの参加者が増えるんでしょうか。
「行動する人は、行動するんですよ。」(H.Fさん)
サロンのメンバーを見渡すと、スイミングに日本画、読み聞かせとアクティブな方が多くいらっしゃいます。そう語るH.Fさん自身も、ごみ袋を手に毎朝5000歩ほど散歩しているとのこと。
「歩きながら挨拶するの。おかげで色んな人と知り合ったんです。行動した方がいいんです。このサロンだけじゃなくてもいいからね。」(H.Fさん)
16-2管理組合ではサロンだけでなく、年に何回か「芋煮会」や「梅見会」「花見会」「映画上映」などのイベントを企画しています。こういったイベントに気軽に参加することで、住民同士が顔を合わせられます。
「こういったイベントも、サロンの運営委員がサポートしています。芋煮の材料を用意したり、梅見会ではけんちん汁作ったりね。サロンみたいな組織があればこういったイベントのサポートができますよね。」(A.Sさん)
サロンは参加するメンバーだけでなく、広く住民同士が顔見知りとなることに尽力しています。
「行く場所があって、適当に時間を過ごすことがサロンの目的だから。目的持ってやっちゃうとやる方も負担だし、来る方も(目的が)合わないと来なくなっちゃうからね。お互いの存在をなんとなく確かめられる、目的を持たないで気楽に来られるようにね。顔を見られることが大切なことだから、それがいちばんの目的ですね。」(A.Sさん)
「ふれあいサロン」はずっと変わらず存在すること、いつでも誰でも気軽に参加できる場所をつくることに大きな意味を見出し、無理なく続けられるよう、月二回 “お茶を飲みながらおしゃべりする”という形になりました。気が向いた時、困った時にいつでも誰でも参加できるそんな「ふれあいサロン」がある竹山団地16-2ブロックには、住民同士が助け合える安心の暮らしがあると感じました。
サロンが終わっても、話は尽きません。おしゃべりって本当に楽しい!
取材・執筆 畑道代(森ノオトhttp://morinooto.jp)
撮影協力 村上亜希枝
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